コラムvol.24「ふじもとの酒場放浪記Vol.3」


福岡大学法学部同窓生によるリレー式コラム。
第24回目のコラムは藤本俊史さん(昭和52年卒)です。
アンコールに応えて、酒場放浪記の第三弾です。
・第一弾:ふじもとの酒場放浪記
・第二弾:早良区に餃子の老舗

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夜の10時過ぎ、まだ国体道路の天神界隈は若者で賑わっていた。
今回は中央区今泉にあるライブハウス「マスカレード」の千一夜物語。狭い入口の突当りに扉があって、その扉を開けるとライブ中の音楽が突然耳に入ってきた。
この日はシルクドソレイユの福岡公演の合間(休息日)のため、その公演でドラムを叩いているダニエルが店に遊びにやってきて、ステージでドラムを打ち鳴らしていた。ダニエルはブラジル人で少しばかり日本語ができて、挨拶は無事完了した。ステージではダニエルの左後ろに、この店のオーナーの国友さんがハモンドオルガンの名手で、60歳半ばとは思えない熱いプレーを。右には福岡出身のギタリストぺぺ伊藤(日本人)。ぺぺはボサノバのユニットBrisa do Brasilとしてボーカルの鮫島直美さんと組んで活躍中。
千一夜はまだ始まらんのか!と思われているでしょうが、しばらくお待ちを。
取り敢えず私は歌い終わった鮫島さんの横に座ると、店のオーナー国友さんの奥さまが生ビールとつまみを持ってきた。夕食をすませてなかったので、「おなかすいた!」というと「ここは食べ物はないのよ、ごめんなさい」と申し訳なさそうにカウンターに引き上げた。しょうがないのでビールを空っぽの胃袋に一気に流し込んだら、これがまた気分がいい。
魯山人が「空腹は最高の食材」といったことが頭に浮かんだ。2杯目のジョッキも飲み干し、バーボンMaker’sMarkをキープして、気前よくミュージシャンにもとハイボールを注文し乾杯!いい加減酔いが回ってきたが、心地よく演奏がうまく上手に聴こえる。失敬!いや上手い人達ですが。
すると先ほど食べ物はないといった奥様が、「パンがありましたよ」とパンとチーズと美味そうなハムを運んでくれ私の前のテーブルにおいてくれた。その仕草が「しょうがない子ね。まったく」みたいな女性オーラ満開を感じさせてくれて、ほんと生きててよかった。「胃袋つかまれた!?」
そろそろ千一夜風になりそうでしょう。
で、Makers’Markもシャープな味わいで酔わせてくれて、ついでに隣に座って一緒に飲んでいた美人ボーカルも酔ってきたのか顔が薄くピンクになって色っぽくなってきた。「顔が赤くなって恥ずかしい!」といいながら再度ステージに向かいギターを手にして歌いだした。実に色っぽい。声もアルコールに濡れて一段といい。
ある建築家が「建築に限らずモノには色気がないとつまらない」といった。また別の建築家が「パリの街はエロティックだが、東京はワイセツだ!」と。
うーん、女性の色気?男性の色気?モノの色気?エロティックとワイセツ?。
今歌っている色っぽい女性の歌を聴きながら、「色気」って何だろうと思った。出されたパンとチーズをムシャつきつつ。